訪日外国人キャンパーの利用動向について(北海道を例として)①

訪日外国人キャンパーの利用動向について(北海道を例として)①

〜アフターコロナからのインバウンド需要対策を考える〜

■はじめに

訪日外国人旅行者は2003年からスタートした“ビジット・ジャパン・キャンペーン”等により順調に増え、2019年には過去最高の3,188万人(対2003年比6.1倍)を記録しましたが、翌2020年4月7日に新型コロナ感染に対する緊急事態宣言発令によって、訪日外国人旅行者数は2020年412万人、2021年25万人と大きく減少しました。しかし2022年10月訪日外国人旅行者に対する入国制限もほぼ全面的に解除されるに至り、再び外国人旅行者増加の兆しが見えてきています。

本稿では、北海道における外国人キャンパーの利用実態について、上富良野町日の出公園オートキャンプ場を例に、コロナ感染拡大以前の利用者数の推移や利用スタイルについてご紹介するとともに、来シーズン以降の外国人キャンパーの利用について3回に分けて考察します。

■上富良野町日の出公園オートキャンプ場の概要

本キャンプ場は、オートキャンプサイト25、フリーサイト・車中泊サイト120、コテージ10、計155サイトのオートキャンプ場です。北海道の大半のキャンプ場の営業期間は4月から10月の約半年間ですが、本キャンプ場も同程度の営業期間となっています。
キャンプ場はラベンダーで有名な日の出公園内にあり、市街地にも隣接し、利便性が高く、また富良野・美瑛地域の中央部分に立地していることから、観光拠点としての利用にも便利な立地となっています。同地域はラベンダーを中心とした花観光や丘陵風景が美しい地域でもあり、北海道における訪日外国人旅行者の人気観光地のひとつとなっています。

■外国人利用者数の推移

北海道では2013年頃から一部のキャンプ場で2019年まで外国人利用者が急激に増加してきました。北海道で最も早くその傾向が見られたのが本キャンプ場です。
2013年から2019年の総利用者数(延宿泊数)の推移(図1)を見ると、緩やかに増加しています。

このうち外国人利用者数の推移(図2)をみると、2012年以降、急激に増加傾向を示し、同年212人であったのが、最も多かった2018年には3,705人を記録し、実に17倍強の増加となりました。その間、日本人利用者数は14,000人から15,000人程度で安定していたので、総利用者に占める外国人利用者の割合は急増し、2012年1.5%であったのが、最も多かった2018年には21.2%に達し、5人に1人が外国人利用者となっています。
こうしたオートキャンプ場の外国人利用者数の増加傾向は、次第に北海道内の他キャンプ場においても顕在化しつつあり、2019年には札幌市周辺や観光地周辺キャンプ場で増加が顕著になっています。

図 1総利用者数の推移(2012-2019)

図 2外国人利用者数・総利用者数に占める外国人利用者数の推移

■月別利用の特徴

北海道内のキャンプ場の利用者数は、夏休み期間と重なる8月が最も多いのが一般的です。しかし、本キャンプ場の外国人利用者は7月が最も多くなります。これは世界的に秋入学(9月)を控え、学年末となる夏休みが7月初旬からスタートするためです。そのため本キャンプ場では日本人を加えた総利用者は7月が最も多くなります。8月の外国人利用者は7月の半分以下になるのですが、これは需要が減少するというより、繁忙期のため予約が取りづらいことが原因となっているのではないかと考えられます。(図3)

図 3 月別日本人・外国人利用者数(2019年)

特に7月は比較的サイト等に余裕のある時期なので、キャンプ場運営にとっては収益性の面からも貴重な需要と言えます。総利用者に占める外国人の割合は7月には25.0%と全体の4分の1を占めています。さらに6月は日本人の利用が少ないこともあり、外国人のシェアが32.1%に達し、3人に1人が外国人キャンパーとなっています。(図4)

図 4 外国人月別利用者数・総利用者数に占める外国人利用者数の割合(2019年)

今回はキャンプ場の外国人利用者数の推移、月別利用者数の特徴といった量的な部分についてご紹介しましたが、次回は実際の外国人キャンパーの利用スタイルを中心にご紹介する予定です。

(参考文献)
・2019年全道オートキャンプ場管理運営担当者会議資料(2019年11月/NPO北海道オートキャンプ協会キャンプ場部会)
・北海道オートリゾートネットワーク20年の歩み(2010年3月/社団法人北海道オートリゾートネットワーク協会)


(執筆)

宮武清志(miyatake@readjust.co.jp
株式会社リージャスト札幌支店長
本稿につきまして、ご不明な点・ご質問等ありましたら、上記宛メールにてお知らせください。
1953年北海道室蘭市生まれ
1988年から、“オートキャンプ場を核とした地域振興構想=オートリゾートネットワーク構想”推進のため、北海道において基幹施設となるオートキャンプ場整備および全道的なネットワークづくりに参画してきました。その間、NPO北海道オートキャンプ協会理事(~2019年)、札幌国際大学観光学部教員(~2021年)を兼務してきました。