アフターコロナのインバウンドを考える 第3回

アフターコロナのインバウンドを考える 第3回

〜訪日外国人キャンパーの利用動向について(北海道を例として)〜

前回は外国人キャンパーの旅行・観光のスタイルについてご紹介しました。今回はアンケート調査結果(実施概要は第2回に記載)から実際のキャンプスタイルについてご紹介します。

■北海道内における主な交通手段

北海道では近年、来道観光客のレンタカーを利用が急増してきました。いわゆる「フライ・アンド・ドライブ」です。これは個人旅行の進展、特に無雪期における道路走行環境の良さ(沿道景観、広幅員等)、公共交通機関(特に鉄道)が利用しづらいなどの理由から空港でレンタカーを借りて観光する「ドライブ観光」需要が高まってきています。

キャンプ活動の大半は個人旅行であることから、利用交通手段(図1)の3/4はレンタカー利用となっています。また空港や主要都市周辺にはキャンピングカーのレンタル業も立地していることから、キャンピングカーをレンタルして周遊するキャンパーも約2割程度います。

図 1主な交通手段

■宿泊予定のキャンプ場数および総宿泊数

今回の旅行で宿泊する予定のキャンプ場数では「1箇所(24.5%)」が最も多く、「3箇所(16.7%)」、「2箇所(8.8%)」が続いており、1~3箇所で全体の約半数を占めています。最も多かったのは1名が15箇所で、単純平均で5.8箇所となっています。

また今回の旅行でのキャンプ場での総宿泊数は、「1泊(16.7%)」と「4泊(16.7%)」が最も多く、「5泊(10.2%)」が続いています。最も多かった者が1名30泊、9名が14泊しており、キャンプ好きが伺われます。また、キャンプ場1箇所あたりの単純平均泊数は1.51泊で、1箇所のキャンプ場における長期滞在というより、多くのキャンプ場を巡る広域周遊的利用となっているようです。

■利用したキャンプ用品と手配方法

利用したキャンプ用品は「テント(84人,74.3%)」が最も多く、「寝袋(77人,68.11%)」が続いています。また利用キャンプ用品の手配方法では「すべて持参(68.8%)」、「持参+レンタル(19.4%)」で、「すべてレンタル(11.8%)」であり、基本的には持参しているキャンパーが大半です。持参用品はテントと寝袋を中心にテーブル・チェアといったファニチャー類を持参してくる者も少なからずいるようでした。

図 4持参したキャンプ用品

また持参した理由としては「自分の道具を使いたかった(70.0%)」が最も多く、自分の道具への思い入れが強く感じられます。ただ、「レンタルできるかどうかわからなかった(27.1%)」方がいることから、事前の情報提供も必要と考えられます。

 ただ、日本人が国内でキャンプするようなフル装備のスタイルは難しく、キャンプ場内でのキャンプスタイルを見る限りでは、極めてシンプルなものとなっています。(写真)

■キャンプ中の食事

キャンプ中の食事では、「食材を購入し、調理した(69人、61.0%)」が最も多く、「レストランを利用(64人、56.0%)」が続いています。中には「インスタント食品を持参(30人、36.0%)」するキャンパーもいるようです。あまり知られていませんが、台湾では宗教上の理由もあり、いわゆるベジタリアン(菜食主義者)の割合が高いこともあり、本来自炊が基本のキャンプ活動は相性がよいのかもしれません。ですから一般の台湾人観光客にとっても好きな食材を選べるコンビニは重宝されているようです。

図 7食事の方法

■上富良野日出公園オートキャンプ場の認知方法

本オートキャンプ場の認知や情報入手方法ではインターネットによるものが大半を占めています。「ホームページ(57人、50.0%)」が最も多く、「ブログ(48人、42.0%)」、「SNS(41人、36.0%)」が続いています。一方「北海道のキャンプ場ガイド(日本語)(33人、29.0%)」も多く、北海道でのキャンプに対する関心の高さが伺えます。

図 8キャンプ場の認知方法

■キャンプ場の予約

本キャンプ場を利用するにあたって予約した者は61.9%で、全体の約6割が予約しています。予約方法では「電話(35.7%)」が最も多く、「日本語が話せる友人に依頼(22.9%)」、「Eメール(15.7%)」が主要なものとなっています。利用者の大半が英語を話せることから、片言の英語で予約しているようです。キャンプ場のスタッフも当初はかなり混乱していたものの、次第に対応できるようになっていったとのことです。

一方予約をしなかった者も38.1%いましたが、その理由としては「予約は不要と思った(74.5%)」が大半を占めています。利用者の大半は7月に集中しており、この期間は夏休み前の準繁忙期ということもあり、大きなトラブルは生じていないようでした。

 

■滞在中に不便を感じたか

外国人キャンパーがキャンプ場を利用する際に最も心配なのが、使用言語の違いによるコミュニケーションです。しかし、そうした懸念にも関わらず「不便を感じなかった(79.6%)」と、約8割の者があまり不便を感じていなかったようです。また「不便を感じた(15.0%)」者は多くはありませんが、内容としては大半が「スタッフとのコミュニケーション」や「多言語による情報提供」をあげる方で、主に言語の違いによるコミュニケーションに関するものでした。

図 11滞在中不便を感じたか


(執筆)

宮武清志(miyatake@readjust.co.jp
株式会社リージャスト札幌支店長
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1953年北海道室蘭市生まれ
1988年から、“オートキャンプ場を核とした地域振興構想=オートリゾートネットワーク構想”推進のため、北海道において基幹施設となるオートキャンプ場整備および全道的なネットワークづくりに参画してきました。その間、NPO北海道オートキャンプ協会理事(~2019年)、札幌国際大学観光学部教員(~2021年)を兼務してきました。