高校教諭でアウトドア部顧問をしているJACオートキャンプ指導者からアウトドア部の活動の様子を報告いただきました。今回は顧問単独による記事です。
| 私が顧問を務めているアウトドア部では、現在高校1年生10名、高校2年生16名、高校3年生18名の計45名で活動している。 今回は、普段の活動報告ではなく、顧問より皆様への「教育実践報告」である。タイトルは「高校生を対象としたオートキャンプの教育的効果の検証~武蔵越生高等学校アウトドア部における実践報告~」である。アウトドア部の顧問を拝命して約6年が経過しようとしている。果たしてその活動の中で、生徒にどんな力が身についたのか、どんなことを思って生徒が活動しているのかを、具体的に数値化したことはない。そこで今回は、教育実践報告として、アウトドア部の活動についてまとめたレポートを掲載する。これが多くの人々の目に留まり、「アウトドア」もとい「キャンプ」活動が、教育現場でどのような効果をあげられているのか、知っていただければ幸いである。同時に、残り少ない令和7年度の活動も、3月末のラストスパートに向けて駆け抜けていきたい。 来年度の目標は無論、「活動を収益化し、持続可能な活動へ」である。あまり褒められた話ではないが、どうしても活動の予算は「持ち出し」が出てしまうのが実情である(※それでも、数年前に比べたらずいぶんと良くなったものである)。活動をうまく収益化して、「稼げる」活動になることも、またアウトドア部が続いていくためには必要であると考える。ぜひ、アウトドア部の活動にもご協力、ご賛同いただける企業の皆様を募集中です。 |
高校生を対象としたオートキャンプの教育的効果の検証
~武蔵越生高等学校アウトドア部における実践報告~
顧問 髙橋皓正
1.はじめに(研究背景・目的)
近年の学校教育においては、知識・技能の習得だけでなく、主体性、協働性、課題解決力、リスクマネジメント能力など、いわゆる「生きる力」の育成が求められている。その中で、自然体験活動は、生徒が実体験を通して学ぶことができる有効な教育手法の一つとされている。
武蔵越生高等学校アウトドア部では、登山、キャンプ、その他様々な地域連携活動を通して、実践的な人間力の育成を目的とした活動を行ってきた。本報告では、その中でも「オートキャンプ」に着目し、高校生にどのような教育的効果をもたらしているのかをアンケート調査により検証することを目的とする。
2.武蔵越生高等学校アウトドア部の教育的特徴
本校アウトドア部の活動は、単なるレジャー体験ではなく、「安全管理」「協働作業」「主体的判断」を重視している点に特徴がある。しかし、テント設営、調理、火起こし、役割分担、時間管理、危険予測など、すべての活動を生徒主体で行わせることで、実践的な判断力と責任感の育成を図っている。また、自然環境の中での活動を通して、環境意識や社会性の涵養も同時に目指している点も本部活動の大きな特色である。
3.研究方法
(1)対象
調査対象は、武蔵越生高等学校アウトドア部に所属する生徒44名である。
(2)調査方法
Googleフォームによる無記名アンケートを実施した。質問項目は、オートキャンプ体験による自己効力感、協働性、主体性、粘り強さ、コミュニケーション力、安全意識、学校生活への波及効果などについて5点法で回答させた。
(3)分析方法
5点法(1〜5)を数値化し、平均値を算出することで、アウトドア部のキャンプ活動による教育的効果を定量的に分析した。また自由記述については内容分析を行った。
4.研究結果
アンケートで回答させた項目は以下のとおりである。また、全員がすべての項目に回答し、回答が無効となった項目はない。
【Ⅰ.基本情報】
Q1 学年(1年生/2年生/3年生) Q2 性別(男/女)
Q3 アウトドア部の在籍期間(6か月未満/6か月以上1年未満/1年以上)
【Ⅱ.オートキャンプ体験について】
Q4 キャンプ活動を通して自分に自信がついた
Q5 仲間と協力して行動できるようになった
Q6 自分から進んで行動する場面が増えた
Q7 困難な状況でもあきらめずに取り組めた
Q8 仲間とのコミュニケーションが円滑になった
【Ⅲ.オートキャンプ体験について(記述式)】
Q9 キャンプ活動で「自分が成長した」と感じた場面について
Q10 アウトドア部での「キャンプ」に関する活動で、最も印象に残っていることを、具体的に記述
【Ⅳ.学校生活・価値観への影響】
Q11 学校生活でも積極的に行動できるようになった
Q12 自然環境を大切にしたいと思うようになった
Q13 危険を予測し安全に行動する意識が高まった
Q14 今のアウトドア部の活動に満足していますか?
Q15 今後もアウトドア活動を続けたいと思うか(はい・いいえの二択)
Q16 Q15で回答した理由について
Q4~8、11~13は1~5の5点法で回答。「1」…全くそう思わない 「2」…あまりそう思わない 「3」…どちらともいえない 「4」…ややそう思う 「5」…非常にそう思う のうちから、最も自分自身の考えに近い1つを選択した。
Q14は「全く満足していない」「あまり満足してない」「普通」「満足」「とても満足」のうちから、最も自分自身の考えに近い1つを選択した。
まず、5点法で回答した項目について、それぞれ活動歴1年未満の生徒と1年以上の生徒で平均値を取って、そのスコアの差を調べた。それぞれ統計的な有意差は認められなかったものの、平均値を見ると「在籍期間が長いほど、自己評価が高くなる」という明確な傾向が確認された。特に「Q5 仲間と協力して行動できるようになった」は、統計的にも有意な差が出る一歩手前まで来たといってもいいだろう。

また、Q4~Q8、Q11~13について、活動歴ごとに「ややそう思う」「非常にそう思う」の回答個数を調べたところ、在籍期間が長くなるほど、キャンプで身に着けてほしい能力について、おおむね肯定的に受け取れる回答が増えた。今回は、多くの項目で肯定的回答(4:ややそう思う、5:非常にそう思う)が高い割合を占めた。


また、Q10における回答を、学年別にご紹介する。特に、Q4~Q8の質問項目との関連性が高いところには、太文字としてある。
[1年生] ※一部抜粋
- ときがわアウトドアフェスをやったことです。お客さんと多く接するのでコミュニケーションスキルを上げる練習になりました。
- 自分たちで企画していろいろな経験ができたこと。友達と川で遊んだりスノボーに行ったり普通じゃできないことがいっぱいできること。
- 防災キャンプによるボランティア
- 夏休み中にいった夏のキャンプではしゃいだこと。
- 初めてのテント設営で、とても時間がかかってしまったのですが一から説明書を読んで理解して設営するという貴重な経験ができてとても印象に残っています。
- 昭和ふるさと村で皆でキャンプした事
- 一年生が主導で行うイベントは色々なアクシデントが起きたものの乗り越えることができ自分に自信がついた。
- それぞれのキャンプでのテント設営、食事(調理)イベント出店時の接客
1年生は活動としても2年生という見本を見ながら、手習いで様々なスキルを習得していくフェーズであるが、今年の1年生はメンバーが少ないこともあり、「来年は自分たちが主導でやっていかなければいけない」という意識の萌芽がこれまでの学年よりも早い。そのため、様々なことを自分たちが主導でやっていく場面が非常に多い学年でもある。それでもまだまだ、「先輩がいる」という甘えに乗じて、なかなか自分たちから行動するというのができない一面も見られる当たり、なかなか先輩のようにはいかないものである。
[2年生]※一部抜粋
- 釣ったものしか食べれないというキャンプで自分達で釣って自分達で捌いて自分達で食べるという全てみんなで協力してなにかをするということが印象に残った。
- 子供と一緒に火起こししたのが印象に残った。
- みんなと協力してイベントの装飾などをして部員たちとの仲が深まったこと。
- JAC近畿の集い2024の運営やキャンプ活動。
- 釣りキャンプ 自分達が釣ってきた魚だけを食べるという経験が素晴らしかった。
- 全てが思い出に残っていますが、その中でも最も印象深いのは、先生や仲間と共に焚き火を囲んだひとときです。火の温もりを感じながら温かいコーヒーを飲んだ時のことは忘れられません。
- 一番印象に残ったのは、まるひろ文化祭です。今回のような大きなイベントに出たことはなく、1日中頑張って働いた記憶が印象に残っています。キャンプ関係のものからハンドメイドまで様々な体験があってさすがアウトドア部と思いました。
- 丸広文化祭 急遽リーダーが変わったが、共同で出展する企業関係を本格的に行ったこと 他は名のしれた大企業でしたが全うし頑張れたこと
- 名栗の夏の4days。夜中におこされたり子どもたちがすぐに喧嘩を始めてしまったりして大変だったけど最後には班の子たちから手紙をもらって嬉しかった。
2年生は、今年は様々な場面で率先して動くことが多く、よく顧問を助けてくれた学年であった。2年生は半数が役職持ちであり、そのいずれのメンバーも「行動力」に長けたメンバーだと言ってもいい。自分たちで思考し、行動を起こすことができる力を感じる学年である。そのため、内容についても1年生よりもずっと濃い内容となっていることが伺える。
[3年生]※一部抜粋
- サンタヒルズでのイベント参加。理由として自分が初めて参加したキャンプであることと、1年後また帰ってきて自分の成長を感じたこと。1回目のサンタヒルズでは右も左もわからず、なんとなく参加してしまった。でも、自分なりに楽しめたと思うし、コミュニケーションを取ったことでその後の協力に繋がったことを覚えている。2回目のサンタヒルズでは、自分がすべきことも完璧とは言えないがある程度は分かるようになった。なにより成長したと感じたことは人との繋がりを自分から作ることにひっかかりを感じなくなった。
- 2023 JAC近畿の集い 初めてのキャンプイベントで内気な性格の私はまだアウトドア部に慣れきれていなかった。だが今回のキャンプで同期と共同し、イベントMCやキャンパーとの交流をこなしたことで、無事成功することが出来て自信につながった。
- 2023〜2025年 3年連続で参加したJAC近畿の集い 多くのキャンパーの方々とアウトドア部主催の企画を行うなかで、キャンプで工夫している部分などを教えていただいたこと。
- 2年時に行った昭和ふるさと村。廃校を利用したキャンプ場なので、学校にあるような体育館の中でドッジボールやバスケ、バレーボールをすることができて部員同士の関係性を深められたこと。その夏の最後のキャンプだったこともあり夏の集大成だったこと。
- 整備されたキャンプサイトでも、虫などの要因で設備、例えばトイレなどが満足に使えないことがあった。こういう時に頑張るために覚悟してキャンプは行くべきだなと思った。
- 3年生の夏と冬に行ったゆるキャン聖地巡礼の旅。これまで部活で聖地巡礼をした事が無かったので不安な要素もあったけど、3年生2人と顧問の計3人だったので、普段のキャンプとは違ったキャンプを楽しむことができた。また、ゆるキャンで出てきたキャンプ場でキャンプ飯を食べるので、ゆるキャンの世界に入った気持ちでキャンプ出来たので良い思い出となりました。
- テント設営で、どこに立てるかを考えないと上手く立たない事から柔軟な考えをした事でテント設営が印象に残ってます。
- 文化祭。装飾準備や工作準備、そして当日の調理は天気がいい上に、火を使って行ったので、とても暑かったことが印象に残っています。
- リーダーシップやいろんな年齢層とのコミュニケーションなど人生において大切な事を沢山学べた。何より、一生の友達ができた。
- ACNオートキャンプ場in勝浦まんぼう / キャンプを全力で楽しみつつ、普段乗れないような漁船に乗って千葉県の海を堪能出来るから 。
3年生は、この3年間の活動の集大成ともいえる内容が数多く見受けられた。アウトドア部の引退時期は3年4月末…つまり、3年生になった瞬間即引退になるのであるが、おおよその生徒は11月の総合型・学校推薦型選抜が終わり次第、また戻ってきて活動をする生徒が多い(なお、短大・専門学校・就職希望の生徒は引退がない。引退があるのは四年制大学に進学希望の生徒のみ)。その中でも、オートキャンプ特有の「不便さ」や「共同作業(テント設営・料理)」が、生徒の協調性やレジリエンス(困難に立ち向かう力)を育んでいると推察される回答が非常に多いのが3年生の特徴だった。
5.考察
本研究の結果から、オートキャンプは高校生に対して多面的な教育的効果を持つことが示された。特に協働作業を必要とする場面が多いことから、自然とコミュニケーション能力や他者理解が育成されていると考えられる。また、自然環境下では予定通りに進まない場面も多く、生徒はその都度判断し、行動する必要がある。その過程が主体性や問題解決力の向上につながっていると考えられる。さらに、火器使用や天候変化への対応、外部での様々なボランティア活動を通して、危険予測能力や安全意識が高まっている点も重要な成果である。
6.教育的意義
オートキャンプは、教室内では育成しにくい「実践的判断力」「協働的態度」「責任感」「リスクマネジメント能力」を総合的に育成できる教育活動である。特に本校アウトドア部のように、生徒主体で運営させることで、単なる体験に終わらず、学校生活全体へと学びが波及している点は大きな意義を持つ。特に、長期的な活動継続が、より高い教育的効果につながる傾向が確認された。
7.課題と今後の展望
本研究は自己評価による調査であるため、今後は行動観察や教員評価など、客観的指標との併用が課題となる。また、学年別・在籍期間別の比較分析を行うことで、より詳細な効果検証が可能になると考えられる。今後もオートキャンプを核とした実践的教育活動を継続し、教育的価値の深化を図っていきたい。
8.まとめ
本研究では、武蔵越生高等学校アウトドア部におけるオートキャンプ活動が、高校生の主体性、協働性、コミュニケーション力、安全意識、環境意識の向上に有効であることが示された。オートキャンプは単なる野外体験ではなく、現代教育における重要な人間形成の場として位置づけられる実践であるといえる。
