
実は、5年ほど前からキャンプ場の管理者たちの間で「最近の夏は、なんだかこれまでと違う…」という声が上がっていました。そして今、まさにその予感が現実になっています。連日の猛暑により、「夏はキャンプを控える」というユーザーの声も増えてきました。かつては“キャンプに扇風機を持ち込む”だけでも異色とされていたのに、いまや“スポットクーラーを持参するキャンパー”もちらほらと。
こうした中で注目を集めているのが、「冷房付き」キャンプサイトという選択肢です。冷房という“安心材料”があることで、夏でもキャンプを楽しみたいというニーズの回復が期待されています。
さらに注目したいのは、その冷房機器を「ユーザーの買い切り」に頼るのではなく、レンタル品としてキャンプ場が提供するというアプローチ。ユーザーに快適性を提供しながら、同時に追加収益も見込める。そんな“快適さと経営”の両立を図る取り組みに、いま多くの関心が集まっています。
1. 夏の市場動向とチャンス

スマホカレンダーの行動データを分析した TimeTree 未来総研 によると、猛暑だった 2024 年は 7〜9 月の「キャンプ」予定が 2019 年比で減少する一方、エアコンなど設備が整った「グランピング」予定は約 3 倍に増加。涼しく過ごせる環境が選択の決め手になりつつあることが読み取れます。
参照先:【未来データレポート 2024年9月版】猛暑の2024年、夏特有の予定は7、8月減少傾向に。8月の「山・海」の予定は2019年に比べ約2割減 | 株式会社TimeTreeのプレスリリース
2|導入キャンプ場の取り組み例
そこでポータブルクーラーなどを含む暑さ対策を施している事例を集めてみました。キャンプ場名は匿名とさせていただきます。

施設 | 施策内容 | 期間・料金 |
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A(関西地方) | 全テントサイトにポータブルエアコン+サーキュレーターを常設。“COOL SUMMER CAMP” と題し、温泉・プールとの組み合わせで訴求。 | 2025年7月10日〜9月29日 (サイト料金に込み) |
B(東海地方) | スポットクーラーを1台限定でレンタル提供(宿泊者向け)。 | 2,500円/泊(2025年7月投稿) |
B(同上、別フィールド) | ダークルームテント+ポータブルクーラー+モバイル電源のセットを提供。 | 10,000円/泊(2024年8月〜夏季限定) |
C(キャンプ用品レンタルサービス) | バッテリー内蔵サーキュレーター(最長45時間)を施設宛にレンタル。法人向け配送にも対応。 | 1,900〜2,100円(通年) |
3|「#暑さ対策 + #キャンプ場」を付けた公式投稿(過去30日)
次にInstagramで「#暑さ対策 + #キャンプ場」とハッシュタグのついたキャンプ場の公式投稿を集めてみました。各キャンプ場で様々な取り組みがされており、いかにお客様に楽しく快適に過ごしていただき、真夏の稼働率を高めていくか取り組まれているようです。投稿の際につけるハッシュタグの選択も重要ポイントとなってくるかもしれません。
投稿日 | キャンプ場(所在地) | 投稿テーマ概要 | 代表ハッシュタグ例 | 投稿リンク |
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2025-07-19 | 大野路ファミリーキャンプ場 (静岡県 裾野市) |
暑さ対策として 1サイトを水鉄砲やり放題エリア に開放。濡れて遊んで涼もう!と呼び掛け。 | #暑さ対策 #水鉄砲 #大野路ファミリーキャンプ場 #キャンプ場 | 投稿を見る |
2025-07-24 | 足柄ふれあいの村 (神奈川県 南足柄市) |
かき氷販売+管理棟前ミストを紹介。来場者へ熱中症警戒アラート注意も。 | #暑さ対策 #ミストシャワー #かき氷 #キャンプ場 | 投稿を見る |
2025-07-22 | ウエストリバーオートキャンプ場 (山梨県 南アルプス市) |
“水遊び×浮き輪レンタル”で涼を演出。夏本番スタートを告知。 | #キャンプの暑さ対策 #水遊び #浮き輪レンタル | 投稿を見る |
2025-07-10 | 昇仙峡オートキャンプ場 (山梨県 甲府市) |
冷却グッズをレンタル/販売。 | #暑さ対策 #冷却グッズ #キャンプ場 | 投稿を見る |
2025-06-07 | サンタヒルズ (栃木県 那須郡那珂川町) |
“夏の7大キャンペーン” を告知。ふわふわかき氷など涼感サービスが目玉。 | #暑さ対策 #かき氷 #夏キャンプ #サンタヒルズ | 投稿を見る |
※各投稿には複数のハッシュタグが含まれていますが、ここでは暑さ関連および場所に関する代表的なタグを抜粋しています。
💡キャンプ以外でも参考になる!涼感アイデア投稿も
キャンプ場の投稿ではありませんが、100円ショップのアイテムを使ったユニークで涼しいアイデアも話題に。
自宅やイベントでも応用できる「費用を抑えて楽しめる暑さ対策」として、手軽に取り入れられます。
- 冷感ジェルシート+扇風機で“ミニ冷風機”をDIY(@kawaiikoto365)
- 100均アイテムだけで“気化熱冷却装置”をつくってみた(@tsurugamine_yasashii_seikatsu)
4|. 冷房機器導入のヒント 〜運営上のプラスにつながるポイント〜

実際に冷房機器の導入を始めたキャンプ場では、「思ったより手軽だった」「利用者の反応が良かった」といった声も聞かれています。
ここでは、そうした取り組みを踏まえて見えてきた運営上のプラスのポイントを、いくつかの観点から整理してみました。
費用対効果や稼働率への影響など、導入を検討する際の参考としてご覧ください。
追加収益の見込み |
ポータブルエアコンは、
価格.com
などで 2〜3 万円台の製品が多数流通しています。 たとえば: 仕入れ 30,000 円 ÷ レンタル料 2,500 円/泊 ≒ 約 12 泊で償却 それ以降は清掃や保守コストを除けば、収益につながります。 |
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真夏の稼働率アップ |
“冷房完備”を打ち出したキャンプ場では、 ・猛暑期でも事前予約が増加傾向 ・SNSなどで「安心・快適」といった声が拡散 具体的な数値は非公開ながら、こうした傾向は複数の現場から報告されています。 |
場の価値向上 |
WBGT(暑さ指数)掲示や冷房レンタルを通じて、 ・“安全に配慮するキャンプ場”という印象づけ ・ファミリーや初めての利用者に安心感を提供 結果的に、口コミ評価の向上にもつながる可能性があります。 |
補足:
いきなり多台数を導入するのではなく、数台からテスト導入して反応を見る方法も多くの施設で取り入れられています。
SNS やアンケートで利用者の声を集めてから、翌年の正式導入に活かす流れが現実的です。
“数量限定” と明示することで、早期予約・直前予約の両方を促進につなげることもできます。
5|まとめ 〜「暑さ」に向き合う選択肢として〜
ここ数年の猛暑により、夏場のキャンプ需要は一部で落ち込みを見せる一方、エアコンや日陰環境が整ったグランピング施設への注目が高まっています。
実際、スマホカレンダーの行動データをもとにした民間調査では、夏の「キャンプ」予定は減少傾向にある一方、「グランピング」予定は約3倍に増加しているという結果も出ています(PR TIMES掲載データより)。
ポータブルエアコンの導入やレンタル提供は、夏場の安心感につながる対策として、実際に取り入れる施設も増えてきています。
需要の傾向 |
猛暑が続くなか、「キャンプは控えたいけれど、涼しく過ごせるグランピングなら行きたい」といったニーズが高まりつつあります。 実際、冷房設備の有無が施設選びに影響しているという声も多く、“暑さ対策がされているかどうか” が、利用検討のきっかけになる場面も増えているようです。 |
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導入コストと回収の目安 |
市販のポータブルエアコンは 2〜3 万円台のモデルが主流で、比較的手に取りやすい価格帯です。 レンタル料を 1 泊 2,000〜2,500 円に設定した場合、10 数泊程度で機器代を回収できる試算もあります。 無理なく始めやすい設備投資として検討されるケースが増えてきました。 (価格参考:価格.com) |
導入する施設の広がり |
今シーズンからは、全国のキャンプ場でポータブルエアコンやサーキュレーターを導入する例が増えており、 SNS や予約サイトでは「快適だった」「ありがたい」といった投稿も多く見られます。 涼しく過ごせる工夫が、利用者の満足や予約行動につながっているケースもあるようです。 |
おわりに

“暑いから避ける”ではなく、“暑いからこそ行きたいキャンプ場”へ。
ポータブルエアコンなどの冷房機器は、いきなり大規模に導入するのではなく、少ない台数から試してみるといった始め方も可能です。
電源設備や清掃方法、レンタル料金の設定なども、施設の状況に合わせて少しずつ整えていく形で進めることで、負担を抑えながら取り組むことができます。
“暑い夏でも安心して過ごせる場所”という印象づくりは、結果的に稼働率の改善や、施設の信頼感にもつながっていきます。
すでに各地で始まっているこうした取り組みを、もしご自身の施設でも無理のない範囲で試してみるとしたら——そんな視点で、今回の事例や情報がお役に立てば幸いです。(編集部)