コールマン2025年マーケティング戦略と製品開発

コールマン2025年マーケティング戦略と製品開発

2025年2月上旬に、都内で行われた「Coleman2025年マーケティング方針説明会・新作展示会」にお邪魔してきましたのでご報告します。

コロナ後の市場再構築:バブル崩壊からの復活への道筋

「コロナ禍で一時的に膨らんだキャンプ市場のバブルは確かに崩壊しました。しかし、今私たちは底打ちの兆しを感じています」と語るのは、コールマン事業部マーケティングディレクターの根本氏だ。会議室のスクリーンには、過去10年のオートキャンプ参加人口の推移を示すグラフが掲示されていた。2022年、2023年と連続で減少した折れ線が、2024年でようやく横ばいとなり、2025年からは緩やかな上昇カーブを描いている。

都内などの大型アウトドア店舗を訪れると、コロナ禍のピーク時と比べて客足は減ったものの、テント売り場では週末になると真剣な表情で商品を吟味する家族連れやカップルの姿が目立つようになってきた。あるスタッフは「テントの需給バランスが改善され、ようやく適正在庫で運営できるようになりました」と安堵の表情を見せるという。

夏の気温上昇は依然として業界の課題だ。日本気象協会のデータによれば、夏休み期間中の平均気温は過去10年で約2度上昇。「テントの中は蒸し風呂状態」という消費者の声に応えるべく、コールマンは革新的な対策を打ち出している。

125周年の節目:伝統と革新の融合

「創業125周年を迎えた今、私たちはテクノロジーの発展と自然回帰の両立という新たな挑戦に立ち向かっています」。コールマン中里豊社長はビデオメッセージでそう力強く語られた。

「日本のキャンプ市場は変化していますが、人と自然のつながりを求める本質的な欲求は変わりません」と中里社長。その言葉に呼応するように、スクリーンには森の中で家族が笑顔でキャンプを楽しむ映像が映し出された。

データで見るキャンプ市場:回復の兆しと新しいトレンド

市場データを詳細に分析すると、興味深いパターンが浮かび上がる。2016年から2018年にかけてのソロキャンプブームに続き、コロナ禍では市場全体が10〜20%成長した。しかし、その反動は大きく、2023年には多くのキャンプ場で予約率が前年比15〜20%減少したという。一方でコロナ禍でキャンプを初めてキャンプ場を利用したユーザーの中には、その後に着実にリピーターになって残っている層があることも伺える。

「一方で、日帰りのアウトドアレジャーは着実に回復しています」と根本氏は強調する。会議室の別室に展示されたクーラーボックスは昨年爆発的に売れ、今年は更なる販売数を見込んでいるという。実際、週末の公園や河川敷では、コンパクトなグリルとクーラーボックスを持参した家族連れやグループが増加している。オンライン販売でも、特にAmazonなどでのクーラーボックス販売が前年比大幅増と好調だという。

マーケティング戦略:キャンプ初心者の不安を解消

「2025年のマーケティング戦略は、キャンプ未経験者の『不安』を解消することに焦点を当てています」と根本氏。実際に、コールマンは初心者向けのオンラインのキャンプコンテンツを拡充させ、テントの設営から撤収まで、自分のペースで学べるビデオコンテンツを提供している。

YouTubeでのインフルエンサーコラボも積極的に展開中だ。実際にある人気アウトドアYouTuberとコールマンのコラボ動画では、初心者向けのキャンプ指南が120万回以上再生され、コールマン公式サイトへの誘導にも成功している。

また昨年開催イベントでの東京会場では、テント設営に戸惑う家族に、スタッフが丁寧に指導する光景も見られた。参加した40代の母親は「子どもと一緒に自分の手でテントを立てられたことが自信になりました」と笑顔で話していた。

快適な睡眠を提供する新製品ラインナップ

展示会ルームでは、2025年の一押し商品として、快適な睡眠を提供するテントとマットが紹介された。「どれだけ素晴らしい景色があっても、夜眠れなければキャンプは楽しめません」というコンセプトに基づいた製品群だ。

現場の声:実際に商品を体験した感想

会場では、メディア向けに新製品の体験コーナーが設けられており、実際に新型テントと寝具を試すことができた。真っ先に目を引いたのは静音ジッパーの完成度の高さだ。何度開け閉めしても音がせず、夜中のトイレ利用時の周囲への気遣いから解放されるメリットは大きい。

雨音対策テントも興味深い存在だった。従来のテントと比較では新型テントでは明らかに雨音が軽減されていることがわかる。雨の音に敏感な人や、子どもを連れたファミリーキャンパーにとって、この静寂さはキャンプの質を大きく向上させるだろう。

キャンプ業界への示唆:2025年の市場対応のヒント

コールマンの戦略と製品開発から、キャンプ場管理者や関連業界にとって、いくつかの重要な示唆が読み取れる。

まず、気候変動に対応した設備投資の重要性だ。夏の気温上昇は今後も続くと予測されており、キャンプ場には日陰の確保や水場の充実など、暑さ対策が求められる。

次に、初心者層を取り込むための簡易セットアッププランの提供だ。テント設営やキャンプ道具の準備に不安を感じる初心者のために、基本設備が整ったサイトの需要は高まっている。

最後に、日帰りキャンプ需要への対応だ。時間や予算の制約から一泊を避ける層に向けて、デイキャンプエリアの拡充やバーベキュー設備の充実も検討課題となるだろう。


(取材:日本オートキャンプ協会 編集部)