オートキャンプと地方創生①

オートキャンプと地方創生① 〜ABUキャンプフィールド〜

皆様、はじめまして。山口県阿武町で地方創生事業の企画・推進などコーディネート全般を行っている一般社団法人STAGEの田口壽洋と申します。
阿武町では地方創生事業の一環として、この春に株式会社スノーピーク地方創生コンサルティング様の監修及び関係各位のご協力を受けて『ABUキャンプフィールド(ACF)』をオープン致しました。

皆様におかれましては、キャンプが地域との関係人口の創出や消費に繋がることを実感されている方も多いかと思います。今回、日本オートキャンプ協会様よりお声掛け頂き、コラムという形で阿武町の地方創生推進交付金活用事業として、キャンプフィールド創出について皆様にお伝え致します。
ACF開設とそれに伴う水産業・畜産業・林業など地域の産業が包括的に取り組むことで、地域内への貨幣や人の流入、地域外へのその流出抑制を試みる地域内経済循環の促進を目指しています。

 本コラムでは、阿武町の概要や地域資源、それを基にした事業計画、財源確保、有休キャンプ場を活用したスタッフ研修やPRなど各種取組の進め方などを全6回でご紹介させて頂きます。本コラムが皆様のキャンプ場運営や地域の活性化の参考になれば幸いです。

《全6回の流れ》

  1. 町の概要 ←今回はココ
  2. 事業の作り方
    • 役場の理解:視察・テストキャンプ
    • 財源確保:交付金
    • 議会レク
  3. スタッフ配置・研修
    • 地域おこし協力隊
    • 遠岳キャンプ場再興
  4. 告知・PR
    • インスタ、PRキャンプ、スノーピーク、メディア
  5. DMO/体験プログラム、一次産業とキャンプの共通点
  6. まとめ

【阿武町概要】

 阿武町は山口県の日本海側に位置し、人口約3000人、高齢化率は約50%、日本創成会議が2014年に発表した消滅可能性都市896自治体に該当します。 阿武町は平成の大合併で単独町政を選択し、住民に寄り添ったまちづくりを進めてきた町です。移住定住促進を目指し、2015年に『選ばれるまちをつくる』というキャッチコピーで第1次阿武町版総合戦略を策定、2019年に『森里海と生きる町』というキャッチコピーで第2次阿武町版総合戦略を策定しています。

同2019年には、阿武萩火山群が織りなす起伏に飛んだ地形とそこでの暮らしが『日本ジオパークネットワーク』に認定され、2022年には『日本で最も美しい村連合』に加盟が認められるなど、美しく豊かな海や大地の恵みを活用した古くからある暮らしが今なお残っています。
そんな町内と町外を繋ぐ場所として、ACFを阿武町の『まちの縁側』と定義しました。

【滞在時間の延長と関係人口及び町民の活躍の場の創出】

 美しい環境での暮らしが続けられている一方で、観光らしい観光が無いこの町を目指して来る方は多くなく、外から来る方のほとんどは、発祥の道の駅である『道の駅阿武町』へ安く新鮮な魚を始めとした食材の購入を目的として、訪れていました。

私は学生時代より20年以上素潜りでの魚突きに没頭し、全国200箇所以上で潜った中でもトップクラスの海があるこの町にも繰り返し訪れ、いつからか漠然とこの町に暮らしたいと思っていました。

道の駅のある町の中心の奈古エリアは、保育園〜高校までがあり、道の駅で購入できるデパ地下に並ぶほどの食材はもちろん、スーパーやホームセンターもあり、半径5km程度の手の届く範囲で暮らしがまかなえる上に、何百年も変わらなかったであろう豊かな自然環境が同居しています。この町の人や自然が織りなす素晴らしい景色は、道の駅に買い物に来る短時間では吸収しきれません。私が一連の事業に関わり始めた2018年時点では、漁師さんと農家さんがそれぞれ民泊を受け入れているだけで、他の宿泊施設はありませんでした。この町の魅力を知ってもらうには、この町での滞在時間を延長する必要があると考えました。

また、町には気さくに声をかけてくださる住民さんも多くいて、そんな方々に地元のお話を伺うのも面白く、住民さんにとっても外部の方との接点があることで出番が出来、この地域での暮らしに誇りを持ってもらえると考えました。現在、キャンプフィールドと並行して『阿武町版DMO(あぶナビ)』を設立し、体験プログラムをキャンプ場のお客様に提供し、町の暮らしを少しでも知ってもらえる様に進めています。

林業家が教えるチェンソーを使った『スウェーデントーチづくり』や漁師が教える『素潜り海士体験』を始めとして、17団体があぶナビに加盟し、住民さん主導での阿武町の『暮らしの体験プログラム』を徐々に増やしていく予定です。ACFに宿泊された方、体験プログラムへ参加された方は、阿武町の関係人口となっていきます。

【遊休地の活用】

新鮮な地元の食材が手に入る道の駅阿武町は、新港に面しています。この港は私がこの町に通い出した20年ほど前に既存の港が手狭になった為に新たに海岸を埋め立てて作られたものでしたが、漁業者の減少により、新港もほとんど活用されずに遊休地として置かれていました。

【町内への経済浸透】

 一次産業従事者が多い阿武町では、生産者の売上向上が地域へのお金の浸透と捉え、道の駅へ出荷されている生産物の販売促進に繋がる施策が有効であると考えました。お陰様で今年3月12日オープンから週末は満サイトを継続し、ACFに隣接している道の駅の売上も過去最高を記録しています。

 これらの環境要因から、道の駅に隣接したキャンプフィールドを開設することが、この町が『選ばれる町』になるというキャッチコピーを達成する手段となると考えました。 次回は、関係者への事業の理解と財源確保などについて、お伝え致します。


執筆者プロフィール:

一般社団法人STAGE 代表理事 田口壽洋
合同会社やもり代表社員、NPO法人自伐型林業推進協会 理事。
1978年生まれ、神奈川県出身。
広告業界、アウトドア業界等を経て、島根県津和野町の自伐型林業集団「津和野ヤモリーズ」や「島根わさびブランド推進協議会」の立ち上げなど、中山間地域での仕事創出のサポートを行政とともに行う。

山口県阿武町では、地域内経済循環を促進する地方創生事業の企画推進などのコーディネートを担い、ABUキャンプフィールドの設立、無角和種のブランディングなど中山間地域での仕事創出に係る各種事業推進に携わっている。
※田口壽洋氏は阿武町誤送金問題とは一切関係ございません