東京海上がクマ保険を発表 営業停止の損失や安全対策費を補償 キャンプ場も対象に

クマ出没による営業停止リスクに備える保険が登場

近年、全国各地で野生のクマの出没が相次ぎ、多くの人的被害だけでなく、レジャー施設・観光施設・キャンプ場にとっては風評被害や営業継続のリスクが大きな課題となっています。

実際「クマ出没の噂だけで予約減」「出没後の安全確認でクローズ」を余儀なくされるキャンプ場も報告されており、施設運営者の不安は増すばかりです。

こうした背景のもと、東京海上日動火災保険(以下「東京海上日動」)が、レジャー施設向けに“クマの侵入で施設を閉鎖した場合の経済的損失や再発防止のための対策費用を補償する”保険商品「クマ侵入時施設閉鎖対応保険」を新たに発表。2025年12月から販売開始予定のこの保険は、予約を基本として受け入れる観光・レジャー施設を運営する事業が対象。当然キャンプ場も対象となります。

本記事では、この新保険の現段階(2025年11月28日)で知り得る正式発表に基づく内容と、協会として注目する理由をご紹介します。

クマ出没は「事故」ではなく、経営リスクになっている

近年、全国でクマの出没が相次ぎ、キャンプ場を含むアウトドア施設では

  • キャンプ場所在地から遠く離れた目撃情報だけで予約が減る
  • 安全確認のためやむなくクローズ
  • 再開までに時間と費用が掛かる
  • クマ出没に対する問い合わせで他の業務がひっ迫
  • 大幅な売り上げ減少(昨年同月比)

といった事例が現実に発生しています。

保険のポイント(概要)

補償条件:
クマの侵入が確認され、安全確保のために施設を閉鎖した場合で、運営事業者が施設の閉鎖を公表した場合に限る。

補償項目:
・営業停止によって発生した売上・利益の損失
・予約キャンセルによる収入減(すでに受け付けていた閉鎖期間中の予約に限る)
・再発防止のための対策費用(電気柵、威嚇装置、熊スプレー、安全対策等)

補償対象:
予約を基本として利用者を受け入れる観光・レジャー施設を運営する事業者
例)宿泊施設、ゴルフ場、キャンプ場等を運営する事業者

●東京海上日動火災保険公式リリース文はこちら

注意すべきポイント

現段階の補償金額やその上限、補償対象の明確な定義は発表されていません。報道レベルの情報で惑わされないよう、公式サイトなどをチェックしましょう。出没前の対策費用は含まれないものと推測されます。
また、保険料についても10万円~50万円という情報が出ています。こちらも現段階では正式な書面等が確認されていません(2025年11月28日時点)。自施設の規模や過去の出没リスク、稼働率などを考慮し妥当な金額であるかを検討してください。

なぜ今この保険が重要なのか

これまでクマ対策は
・自主的な警戒
・防護柵の設置
・巡回や情報共有 など、防ぐ努力が中心でした。

しかし現実には「対策をしても出るときは出る」「出た瞬間に営業に直結するダメージが出る」という声が多く聞かれます。

今回の保険は、クマ出没そのものをゼロにするものではなく「起きたあと」に備える仕組みという点で、これまでになかった選択肢といえます。

今この保険をどう捉えるべきか

クマの出没はすでに一部の地域の問題ではなく、全国のキャンプ場で向き合う現実になっています。当然、出没自体が圧倒的に少ない地域や、山での目撃情報がほぼなく市街地にばかり出没している事例もあるなか、キャンプ場全体が危険であるという認識の刷り込みを危惧しています。

遠くの出没情報ひとつで予約が動き、実際にクローズを決断せざるを得ない状況が発生している今、必要なのは「気合」や「注意喚起」だけではありません。

・過度な不安による閉鎖を防ぐ
・やむを得ない閉鎖でも経営が致命的にならない
・安心して正しい判断ができる環境を作る

今回の保険はクマを完全に防ぐためのものではなく、出たあとも経営を続けられるかどうかという現実的な課題に対する備えです。
保険だけで安全・安心が確保できるわけではなく、むしろ
・クマ対策としての施設管理、安全確保
・情報収集、防犯カメラ設置、利用者への注意喚起
・出没時のスタッフ対応フローや工法の考え方 といった実務対応と組み合わせることが重要となります。

協会としても、安心してキャンプ場運営ができる一助となれるような動きを行う予定です。つきましては、後日会員の皆様宛にクマ出没に関するアンケート等をお送りさせていただきますので、ぜひともご協力いただけますと幸いです。