オートキャンプと地方創生④〜既存キャンプ場リニューアルと広報〜

オートキャンプと地方創生④〜既存キャンプ場リニューアルと広報〜

2022年3月に山口県阿武町にオープンした『ABUキャンプフィールド(ACF)』。その事業計画は2018年に始まります。一連の事業はキャンプ場を創るのではなく、ヒト・モノ・カネの地域内経済循環を促進することで、阿武町を『選ばれるまち』にすることを目的とした地方創生事業の一環として行っています。今回はスタッフ研修で活用した開業30年を経過した遠岳(とおだけ)キャンプ場リニューアルとメディア(SNSなど)を活用した集客などについてお伝えさせて頂きます。

【遠岳キャンプ場リニューアル】

約30年前に開設された『遠岳キャンプ場』は、3m四方にレンガの枠組みがされた12サイトがあり、7/10〜8/31のみ営業、一人\100/日、集落の団体(平均年齢75歳!?)がリピーターを主としたお客さんの受入や草刈りなどの施設管理をしながら運営していました。期間中の売上約3万円と町からの管理料約20万円で継続していました。
2021年4月〜2021年12月末までABUキャンプフィールド研修スタッフで改修と実際に営業させて頂き、とても実践的な研修となりました。

 改修は、水回りの清掃や劣化した水栓の入れ替え、左右法面の伐採、盛土されレンガで区画されたレンガを撤去し、小さな12サイトを現代のキャンプスタイルに併せて広々と使える5サイトへ変更しました。
 また、電話予約のみだったものを‘なっぷ’での予約決済を可能とし、インスタグラムで告知、利用料金を¥100/日から¥3,300/サイト〜¥5,500/サイトへ変更しました。既存運営団体や地元住民からは、『あんな場所で夏以外に、そんな高額で泊まる客はおらんじゃろ〜』と言われていました。

■改修前:レンガで囲まれ盛土された狭い2区画のサイト

■改修後:レンガ・盛土・垣根を除去し、1サイトとして利用

■改修前:最上段からの眺望

■改修後:最上段からの眺望

■改修前後:トイレ金物

■リニューアルリーフレット

リニューアル後の状況は、抜群の眺望とプライベート感、初心者にも丁寧に対応するスタッフ達が高評価され、週末予約はキャンセル待ちの人気キャンプ場へと変身しました。12月末までの売上は200万円ほどで前年比約6000%となりました。
リニューアル初年度なので、オープンまでのハード整備自体は1週間程度で費用も20万円ほどと多少手はかかりましたが、大幅な収益改善となりました。リニューアル2年目の今年度は、場内メンテナンスに昨年ほど手がかからないこともあり、売上増進と経費削減で利益率も伸びそうです。

遠岳キャンプ場の様な行政管理の格安キャンプ場は全国各地にあると思いますが、現代のキャンプユーザーのニーズを満たす様に少し手を加え、継続的に維持管理ができる単価設定を行う事で、多くのお客さんを呼び込む事ができます。キャンプユーザーの増加は、キャンプ場の直接的な売上だけではなく、道の駅やスーパー、酒屋など近隣への消費効果も大きいので、リニューアルに行政支援があると地域全体が助かりますね。

【SNS・メディア等を活用した集客】

SNSについては、皆様も大いに活用されていると思います。ABUキャンプフィールド及び遠岳キャンプ場も主にはSNS(インスタグラム)を活用して集客を行いました。近隣キャンプ施設やアウトドアメーカー、外遊びなどで関連性が高いインスタユーザーをフォローし、フォローバックされる事でこちらの情報も届くようになります。『#(ハッシュタグ)』を活用することでも、指定の#をフォローしているユーザーに情報が届きます。また、リアルイベントなどでもアカウントフォローしてもらい、特典を提供することでフォロワーを増やすことができ、多くのユーザーへ情報を届けることが可能となります。

阿武町では、地方創生事業としてアウトドアを推進していること、移住者を活用していること、スノーピーク監修のフィールド開設を行っていること、キャンプと地域の一次産業が連携することなど多面的な取組とすることで、県内外問わず多方面からのメディア取材を受け、ABUキャンプフィールドが2022年3月にグランドオープンした際には300以上の媒体に掲載して頂きました。また、PRに伴って、遊休地を活用した地方創生事例として、他自治体や団体から視察に来て頂くことも多くなってきました。

この様に、特別に広告費・販促費を使わずとも、多くのキャンプユーザーにキャプ場や周辺の魅力も伝えることができ、これまでにアプローチできなかった層へも情報を届けられるようになってきていますので、業界全体でアウトドアの魅力を発信し、自然で遊ぶ楽しさを更に伝えられればと思います。

次回は、DMO(観光協会)設立と体験プログラム、一次産業とキャンプの共通点などについて、お伝えさせて頂きます。

お読み頂き、ありがとうございます。ご質問・視察依頼等などございましたら、以下までご連絡ください。解る範囲でご対応させて頂きます。


(執筆)
一般社団法人STAGE 田口壽洋 tag@stage.or.jp

合同会社やもり代表社員、NPO法人自伐型林業推進協会 理事。
1978年生まれ、神奈川県出身。
広告業界、アウトドア業界等を経て、島根県津和野町の自伐型林業集団「津和野ヤモリーズ」や「島根わさびブランド推進協議会」の立ち上げなど、中山間地域での仕事創出のサポートを行政とともに行う。

山口県阿武町では、地域内経済循環を促進する地方創生事業の企画推進などのコーディネートを担い、ABUキャンプフィールドの設立、無角和種のブランディングなど中山間地域での仕事創出に係る各種事業推進に携わっている。