「キャンプ場 係数マネジメント」アンケートレポート

キャンプ場 係数マネジメントアンケートレポート

業界向けメルマガ「ビジネスレポート」の『キャンプ場経営コラム』の連載が約半年経過したタイミングで経営読者層の反応調査のためのアンケートを実施しました。
非常に興味深い有益な結果が得られたので共有させていただきます。

■キャンプ場における係数管理経営に対する関心度

公設キャンプ場の管理者は約2割が「あまり関心がない」、約7割がどちらかといえばあるという「消極的な関心」となった。
一方の民間キャンプ場経営者は同様に約2割が「あまり関心ない」だったものの、約6割は「ある」「大いにある」という「積極的な関心が高い」という結果になった。

係数管理経営の実施状況

■市場分析(マクロ要因分析)

公設・民間ともいずれも実施しているとの回答は1割前後となった。民間事業者は「収益の維持・拡大成長」が事業の存亡に直結するため、特にコロナ禍にあっては危機感も強く「必要性を強く感じ」ているのではないだろうか。

(以下は経営コラムからの引用です)
マクロ要因とは、国レベルで物価や消費、金融などの動きを考えた経済社会全体の動きのことです。イメージでいうと、空から森全体を見るといった感じです。日常では、景気が悪いとか、円高だとか、失業率が上がった、消費トレンドがどうだとかいうニュースが問題になりますが、これらはマクロ要因のひとつです。大きな視点で世の中の動きを見ることで業界のこれからを考えることができますね。

マクロ要因は一企業や個人では如何ともしがたい部分があり、ここの部分を読み間違えるとトレンドから外れた業態などに事業展開をして失敗…!ということもあります。また、市場規模の拡大と自社の売上拡大が比例していない場合は危険な経営状態である可能性が高い、ということも判断出来たりします。

■市場分析(ミクロ要因分析)

結果は、マクロ要因とほぼ同様の比率となりましたが、多くの方が<マクロ要因>と<ミクロ要因>の区別をよく理解されていないと推察されます。要因を<マクロ>と<ミクロ>に分類して目に見える形に文書もしくは図解するだけでも、その後の意識が違ってくるものです。自分の身体の不調を「漠然と体調が悪いんだよな・・・」という段階から「腰や肩の調子が悪い。〇〇にシコリを感じる」その原因が「最近の気候や流行り病のせい」とか「運動不足や食生活の偏りのせいか」がはっきり分けて意識できれば医者に診察に行くことを考えるようになります。忙しさにかまけて定期検診さえ行かないと、後になって何か見つかった場合に大きなしっぺ返しを受けるのと同じようなものです。
1年に1度でもスタッフ全員が集まった際にこうした<市場の見方>の意見交換や話合いの場が持てるといいのではないでしょうか。

(以下は経営コラムからの引用です)
ミクロ要因とは個人や企業個別の経済活動とその収支のことです。マクロが森全体のイメージなら、ミクロ要因は森の木を一本一本見るイメージです。ミクロ要因は企業努力に与かる部分も多いので、例えばマクロでトレンドを外れていても圧倒的な標準化によるコストダウンによって業績を拡大していく、ということも可能になる部分でもあります。


■業界分析(OCC:稼働率)

約半分の民間キャンプ場では稼働率をしっかり把握しながら経営をされているという結果だった。一方で公設キャンプ場では、約6割が「未実施・予定もない」ということでキャンプサイトの稼働率はあまり重要視されていない結果が見えてきた。

(以下、経営コラムからの引用)
稼働率とは…稼働しているサイト数のことで、実際に利用したサイト数を全体のサイト数から割り出した数値です。
ケニーズでは、優先順位としてまず稼働率を上げることを第一の課題として取り組むことにしました。この取り組みによって生産性が上がり、相対的に人件費率が下がりました。それから残った従業員の給与待遇を大きく引き上げ、休みを増やすなど雇用条件の改善をすることができました。・・・

■業界分析(ADR:区単価)

(以下、経営コラムからの引用)
相場からかけ離れた料金設定だと利用者に敬遠されてしまうため、自社はもちろん競合のADRも把握しておくことは経営者にとって重要といえるでしょう。
ADRが上がっても、顧客に割安だと感じてもらう付加価値を創出することができれば単価と稼働アップの両立はできる。

■業界分析(RevPER:営業日の1区画の平均販売単価)

RevPARとは、ADRが販売された区画の平均単価に対して、RevPARは「販売されなかった営業日の区画も含めた平均単価」となります。

(以下、経営コラムからの引用)
ADRとは…実際に利用された1区画の平均単価のことです。売上合計額を稼働したサイト数で割ったものです。RevPARは以下の計算式で求めることが出来ます。

RevPAR=ADR×稼働率

宿泊業界では最重要の収益性の指標です。
「業界が違う」というのは昔の話、メディアで注目されるようになったキャンプ業界への参入を異業種が虎視眈々と狙っています。

■業界分析(ADRとRevPERの比較)

稼働率とADRの数値だけではキャンプ場の本当の生産性は分からないとし、ホテル業ではRevPAR値が古くから取り入れられている
RevPERがキャンプ場でも普及すれば、業界平均値や他キャンプ場と比較することができます。そして自社の現在値が分かれば、具体的なアクションをとることが出来ます。アクションがとれれば数値は必ず改善します。


■収益分析(損益計算書)

損益計算書分析への関心は公設管理者で「業界分析」よりも高い一方で、反対に民間経営者でも約1割は必要性を感じていないという回答だった。業界分析が月例管理であるのに対して、収益分析は多くの事業者で税務申告する際に作成するため1年に1度であることに関係しているのかもしれない(※会計ソフトを活用していればマンスリー管理も可能)

(以下、経営コラムからの引用)
損益計算書の数字を利用すれば、会社のどの部分を伸ばせばよいのか分析することができます。

ケニーズの人件費率をみると、、、(中略)、、14年から社会保険に加入し雇用条件を改善させたことで人件費がぐんと引き上がりました。その後はさらに社員を増加させ、賞与等の給与水準を引き上げていきました。そしてそこから定着した社員の教育が進み、サービスが向上し生産性が上がることによって売上げが増加、相対的に人件費率が押し下がっているのが現況です。さて、現在のケニーズの人件比率は37%ですが、、、(中略)、、これはケニーズの給与水準が低いのか、それとも先ほど異業種の人件費率比較で述べた通り業界の生産性が低いのかの考察も必要となります。それを検証するには労働分配率という指標を用います。

■収益分析(労働分配率)

労働分配率を運用しているキャンプ場はまだ僅かであるが公設・民間ともに取り組まれている実績が報告された。キャンプ業界でも人材確保が困難になってきており、今後さらに厳しくなることが予想できる事から、必要性を痛感している経営者や管理者は多いのだろう。

(以下、経営コラムから引用)
労働分配率は付加価値に対して、どれだけ人件費をかけているのかの割合を表します。「付加価値」とは中小企業では単純に、売上から原価をひいたもの、とここでは定義します。
<労働分配率が高い場合>
給与が高い結果として労働分配率が高い場合、従業員の満足度や士気が高い状態で維持されているため、将来的に会社が成長して収益が増える可能性があります。十分な給与が支払われることで離職率がさがり人材流出を防止します。ただし、労働分配率が高い状態が続くと、例えば設備投資が疎かになり、生産性の低下を招いたり顧客満足度が低下する可能性があります。
<労働分配率が低い場合>
少ない人件費で多くの付加価値を生み出しているのであれば、収益性が高いことになります。しかし、人件費に十分な額が配分されていない場合は、従業員の士気が低くて生産性が上がらず、離職者が増えて優秀な人材を失い企業が衰退することになりかねません。


係数管理の先にあるもの

キャンプ場経営の財務が健全であれば、キャンプ場の管理人やスタッフが明るく笑顔になります。スタッフが笑顔になれば利用者するキャンパーの笑顔も増えます。するとキャンプ場全体の雰囲気も変わり、それが口コミになって地元でも好感を持たれるようになります。さらにはSNSなどを介して全国に広がっていくのではないでしょうか。
経営コラムも今回が折り返しとなりますが、これまでの内容も時折り読み返して初心に戻りながら、残り後半もお付き合いいただけると幸いです。
(日本オートキャンプ協会 事務局編)